移動と「情報行動」の結びつき
電車の中でスマートフォンを操作する人のイメージ(画像:写真AC)
古くから人々にとって「移動すること」は、さまざまなメディアや情報機器を利用する情報行動と結びついていた。【移動中のスマホ】学歴ごとの違いをグラフで見る 身近な移動のシーンでは、鉄道の車内で新聞や本・漫画を読むことや、自動車内でラジオや音響機器(カーステレオ)を聞くことが代表的な情報行動であった。現在ではこれらの多くがスマートフォンに集約されるとともに、SNSや動画などのインターネットの利用を目にすることも多くなった。 こうした移動中での情報行動は、社会全体としてどのように行われているのだろうか。ここでは、以前から日常生活での情報行動について行われてきた全国調査(「日本人の情報行動調査」)のデータをひも解くことで、その実態を明らかにしたい。
3000人調査の結果を読み解く
「日本人の情報行動調査」は1995(平成7)年から5年おきに東京大学の社会情報研究所(現・東京大学情報学府情報学環)によって行われてきた調査で、10代から60代を中心とした約3000のサンプル(調査対象者)を標準に、人々が1日の中で行う情報行動を場所とともに記録したものである。 データは対象者みずからが時間帯ごとに行動を調査票に記録したものを、5分単位でカウントする形式(日記式)を取っている。場所については自宅・職場(学校)・移動中という分類の中から選択されているので、移動手段までは記録されていない。 以上に注意した上で、13歳以上から69歳を対象とした2015年のデータによる結果を見ていこう。
移動中にスマホや携帯 約47%
移動中に情報行動をする人の割合と平均時間(画像:是永論)
表は調査した期間のうち「移動中」という回答が全くない人(移動しない人)を除いた1231人で、2日間にそれぞれの情報行動をした人の割合と、その人たちがその行動を行っていた平均の時間を表している。 結果から、移動中の情報行動については、スマートフォンや携帯電話などのモバイル機器(パソコン・タブレットを除く)で行われている行動の割合(合計46.9%)が、それ以外の従来メディアで行われる行動の割合(合計24.8%)の倍近くを占めることが明らかになった。 個々の行動が占める割合は最大でも10%台と、比較的小さな数値になっているが、これは自動車と鉄道などの手段を問わず(徒歩も含む)、また通勤に限らず移動している人全体の中で占める割合となっているためである。 関東圏など、鉄道が通勤手段の中心となっている地域の人にとっては違和感のある結果かもしれないが、逆に全国で見れば鉄道を手段とする移動は限定的であることも意識されるべきだろう。 ちなみに鉄道に関連した情報行動としては、日記式とは別の質問票(アンケート形式)で同じサンプルに行った調査(1362人・調査期間中移動しなかった人も含む)によれば、車内広告や駅ポスターなどの交通機関における広告の利用者は30.6%(「よくある」「たまにある」の合計)と、鉄道で通勤していれば必ず目にするものにしては決して高い割合ではない。 また飛行機の機内誌は11.7%、新幹線の車内誌は8.2%という利用者の割合であった。 以上の結果は全ての対象者における割合であったが、性別や年齢などの属性による違いはどのようになっているだろうか。
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